勉強・教育

非認知能力とは? 子どもの能力を伸ばすための3つの関わり方

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「いい学校を出て、いい会社に入り、定年まで勤めあげる」

このように親から言われ、がんばって勉強したママ・パパもいらっしゃるのではないでしょうか。
呪文のように、かつては「これが幸せなのだ」と考えられていた人生のお手本のような言葉です。

そんな呪文のもと、日本の教育では長年の間「詰め込み教育」が行われてきました。
ここでは「詰め込み教育」が引き起こした弊害と、教育会で新たに注目を集めている「非認知能力」についてご説明します。

非認知能力とは

幸福度の低い日本

詰め込み式教育の弊害によりいわゆる「指示待ち症候群」や「燃え尽き症候群」といったことが問題視されるのと同時に、日本の国際競争力も落ち始めました。

その上国民の幸福度は低く、2017年の国連の幸福度ランキングによると日本は先進国、新興国に大きな差をつけられています。
155か国中51位という、物質的豊かさとは裏腹に鳴かず飛ばずの結果となっています。

政府がようやく学力重視の詰め込み教育から方向転換を図っているのが、2020年の教育改革でもあります。

巷でも、知識や論理思考だけでなく、「やり抜く力」「他者と協働する力」など、学歴や成績では測ることのできない力が、子どもの将来の成功の土台となるものとして注目されています。

そういった目に見えない力・数値で測ることのできない力を「非認知能力」といいます。

注目があつまる「非認知能力」とは?

知性を数値化するIQは広く知られています。
知識が豊富、算数が得意などIQで測れる能力は「認知能力」とよばれます。

それに対して非認知能力は、知性だけでは測れない、パーソナリティや対人能力のことを指しています。
具体的には、非認知能力とは、「意欲」「協調性」「粘り強さ」「忍耐力」「計画性」などの個人の特性のことをいいます。

非認知能力が注目される理由

この非認知能力が、なぜ子どもの成長にとって注目されているのでしょうか?

日本の社会では、大人になってからの成功には、優秀な成績で有名な大学に入学することが大事だと考えられていました。
しかし、認知能力の高さだけが人生の成功の鍵ではないと示唆する研究結果が近年知られるようになりました。それは日本人の幸福度の低さからも見て取れます。

幼稚園に入る前から数字を50まで数えられる。
小学校に入る前にはひらがなを全部覚える。

こういった、読み書き算数といった早期教育(先取り教育)は、周りの子ができたりすると「うちもやらせたほうがいいのかしら」と悩むものです。

先取り教育と非認知能力

しかし、早期教育には、子どもの知性を一時的に飛躍させる効果はあっても、早期教育を受けなかった子どもと比較して、学年が上がるにつれてその差は小さくなっていくことがわかっています。

学校のテストで点をとるだけでなく、

  • 目標を達成するための忍耐力や自己抑制
  • 他者と協力するための社会性や折衝能力
  • 情動を抑制するための自尊心や自己肯定感

こうした個人の非認知能力を育てることが、子どもが将来的に社会で成功することにつながることがわかってきて、注目されているのです。

非認知能力がもたらす、子どもの将来的なメリットは?

非認知能力が一躍注目を浴びる結果となった、有名な研究をご紹介します。

1960年代前半にアメリカで始まった「ペリー就学前プロジェクト」と呼ばれる、現在まで続く調査です。
この調査結果により、非認知能力を幼児期に伸ばすことが、大人になってからの社会的成功に関係するといわれるようになりました 。

「ペリー就学前プロジェクト」とは、次のようなものです。

ミシガン州でアフリカ系米国人の貧困家庭を対象に行われた研究。3、4歳から2年間、平日は毎日午前中に子どもを幼稚園へ。週に1回、親に対しても保育者か教師が家庭訪問し、子どもの幼稚園での成長について面談する。その後、40年間にわたって追跡調査が行われた。

IQの上昇は、幼稚園に行った実験群と対象群では、始めの数年は差が見られたものの、8歳の時点では、ほとんど違いがなくなってしまった。

40歳時点において、実験群の人々のほうが高校卒業率、収入、持ち家率などにおいてより高く、離婚率、犯罪率、生活保護受給率などにおいて低い。

※国立教育政策研究所 平成27年度プロジェクト研究報告書『非認知的(社会情緒的)能力の発達と科学的検討手法についての研究に関する報告書』より

これらの調査結果に対して、ノーベル経済学賞を受賞したジェームズ・ヘックマンは、IQではなく、「ソフトスキル」つまり非認知能力の差が人生の差を生じさせた、と述べています。

就学前に家庭環境の強化と質の高い幼児教育へ接する機会を与えることが、非認知能力すなわち子どもたちの自制心、粘り強さ、動機付けなどを育んだというものです。

非認知能力と粘り強さ

最近の研究結果でも、非認知能力はスキルがスキルを生むとして、早い段階で非認知能力を高める教育が重要とされています。

つまり、子どもの幼児期から

  • 自分で考えて動く
  • あきらめずに達成する
  • お友達と協力して何かをする

といった経験を積むことが非認知能力を高める上で重要だといえます。

非認知能力を伸ばすための習い事

  • 習い事において大事なこと
  • やり抜く力「グリット」を身につける
  • 「やり抜く力」を身につけるには?

習い事において大事なこと

子ども、とりわけ就学前の幼児期に非認知能力を伸ばすことが大事と聞くと、幼稚園や保育園だけではなく、習い事にも力を入れた方がよいのかと心配になります。

しかし、非認知能力を育てるのに、「どんな習い事か」は重要ではありません。
むしろ、その習い事に対する「子どもの興味」と「親の接し方」が大切です。

非認知能力は、算数や英語のようにこれを覚えればできるようになる、と数値化して測れるものとは違います。
子どもは自発的に「やりたい」と思うなかで、やる気・粘り強さ・探求する力・工夫する力などを身につけていきます。

非認知能力と習い事

そのため、どんな習い事であれ、子どもがやる気をもって集中できるように、本人の興味を尊重することが重要です。
また、サポートする親が「結果」ばかりを重視していては、子どもの物事に取り組む姿勢を損ねることになりかねません。

  • 目標を達成できなくても、「練習を毎日がんばったね」とほめてあげる。
  • 失敗しても、「次はできるようになるよ。こうしてみたら?」と応援してフォローする。
  • 子どもが失敗にめげず、頑張ればできると思えるようにする
  • 人と比べるのではなく、過去の自分と比べる

このように対応していくと、自己肯定感も増し「できるって楽しい」という成功体験が積みあがっていきます。
その経験を経て、子どもが意欲や忍耐力といった、よりよく生きるために必要な非認知能力が伸びていくのです。

やり抜く力「グリット」を身につける

非認知能力と社会的な成功の関係を考察する研究はいくつもあります。
アメリカの心理学者であるアンジェラ・リー・ダックワースも、その一人。
彼女は、成功を左右するのはIQや才能ではなく、「やり抜く力」であると述べています 。

ある一つの特徴が大きく成功を左右していました。それは、社会的知性(Social Intelligence)ではありません。ルックスでも身体的健康でもIQでもありませんでした。やり抜く力(Grit)です。

彼女は、ニューヨークの公立中学校の教師でした。
そこで、IQだけが優等生と劣等生の違いではないことに衝撃を受けます。

頭がすごくよくても、成績の良くない子もいます。
その相関関係が何なのか、彼女は大学院で心理学を専攻します。
「人が成功する要因は何か?」という問いに対して、様々な挑戦的な環境に置かれた子どもや大人についての研究を始めました。

その結果、ひとつの結論が導き出されたのです。

グリット(Grit)-やり抜く力を持つことが成功する鍵である。

この「やり抜く力」は、非認知能力に該当するものだと考えられます。

アンジェラは、やり抜く力とは中長期的目標に向けた、情熱や忍耐力だと述べます。
また、明けても暮れても自らの将来にこだわることであり、何年もの間一生懸命に取り組み、その夢を実現することだと言います。

習い事の場面においても、失敗にくじけず、何回も練習を重ねる子どもが、技術を習得し成長していきます。
子どもが意欲をもって選択した習い事であれば、あきらめずに粘り強く取り組み、「やり抜く力」を身につけさせてあげましょう。

「やり抜く力」を身につけるには?

では具体的に何をすれば、子どもはこの「やり抜く力」を身につけてくれるでしょうか?

アンジェラは、この問いに明確な答えをだしていません。まだ何もわかっていない、と前置きしたうえで、子どものやり抜く力を育てるのに、一番よいのは「成長思考」と呼ばれるものだと彼女は言います。

成長思考とは、学習する能力は固定しておらず、努力によって変えられると信じること。

スタンフォード大学のキャロル・ドウェックが見出したもので、子どもたちは成長について学ぶと、失敗したときにより辛抱できるようになると示しています。
なぜなら、失敗は永続的な状態でないと信じているからです。

子どもの習い事の場面に置き換えてみると、「結果」ばかり重視するのは、この「やり抜く力」の芽を摘んでしまうことにつながります。

たとえば、水泳のレッスンで今日も水が怖くて顔をつけられなかったとします。
そんな時「今日はダメだったね」というのでなく、「はじめは怖かったけど、半分くらい水の中に入れたね」と、目標に向かって子どもが頑張った過程や姿勢を褒めてあげるようにします。
些細に思えるちょっとした言葉がけが、子どもの意欲を伸ばすことにつながります。

非認知能力が子どもの能力を伸ばす

また、「この前はダメだったけど、今日はできた!」という体験を積み重ねることで、子どもは「やり抜く力」に必要な、「続ければできるようになる」という成功思考を覚えていきます。

どんな習い事でも、子どもが意欲をもって取り組んだことで、成功体験を積む。
これが非認知能力を育てるのに重要なことといえるでしょう。

家庭で出来る、非認知能力を伸ばすための3つの方法

  • 寝る前に絵本を1冊読む
  • 子どもが描いた絵について質問してみる
  • 一緒にキッチンに立ってお料理をする

日々の生活の中に、子どもの非認知能力を伸ばすチャンスはあります。

テレビやDVDを見るだけでなく、子どもが能動的に遊ぶ機会を作ってあげましょう。仕事や家があり、子どもにつきっきりになるのは難しい時もありますが、ほんの少しの関わりで子どもの非認知能力を伸ばすきっかけとなります。

寝る前に絵本を1冊読む

たくさん読むのは大変です。
でも、1冊だけなら寝る前の読み聞かせで一緒に読んでも、長い時間はかかりません。

非認知能力と絵本

子どもにとって、絵本は知らない世界を旅するための入り口です
親と一緒に絵本を読むことで、「想像力」が高まります。

また、読み聞かせの途中で質問してみるのもよい方法です。
「思考力」や「表現力」を高めることにつながります。

子どもが描いた絵について質問してみる

家の中でも、幼稚園でも、子どもが絵を描く機会はたくさんあります。
幼稚園や保育園で描いた絵を持ち帰ってきたら、子どもに絵について質問してみましょう。

「これは何をかいたの?」
「どんなところが自分では好きかな?」

など、ただ褒めるだけではなく、質問することで子どもの「語彙力」「表現力」を伸ばすことができます。

一緒にキッチンに立ってお料理をする

料理といっても、子どもに難しい作業をさせる必要はありません。
野菜の皮をむく、卵をかき混ぜるなど、子どもがやりたい簡単な作業を一緒にします。
「意欲」を伸ばすと同時に、「集中力」や「判断力」を高めるよい機会になります。

非認知能力と料理

子どもは遊びの中で学んでいきます。
主体的に意欲をもって遊びに熱中することが、非認知能力を育てるのです。
親の考えややり方を押し付けず、子どもが自由に自分の発想で取り組むことを認めてあげましょう。

親は、子どもにとって最初の先生。
遊びを通じて非認知能力を伸ばすヒントはたくさんあります。
子どもを観察し、「この子は何が好きだろう?」「どんな時目が輝くだろう?」と考えながら接していると、家庭の中で子どもの非認知能力を伸ばすポイントがたくさん見つかると思います。

まとめ

「わたしはありのままで素晴らしい」と自己肯定感を身につけることが、子どもの人生のすべての土台となります。
結果ばかりに目を向けては、非認知能力どころか子どもの存在を否定することになりかねません。

子どもは、親の笑顔が大好きです。ママやパパと一緒に、何かに取り組んだ経験は、子どもの自信となり、大きく成長させることでしょう。

そういったあたたかいコミュニケーションや経験が、非認知能力、すなわち自分の人生を自分で切り開き、人と協力してしあわせな人生を創り出す力を身につけていくための一歩になります。

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